ほめる回数と治療に対する意欲

理学療法の臨床の実際~根拠をもとに治療を考える~

より、ブログを転記します。

 

 

われわれセラピストは治療を行う際に課題ができたことに対して褒めたり、体の状態にいい反応ができたことに褒めたりします。

ただ、時間に限りのある現場では、業務的にメニューをこなすことが主で、患者さんを十分に観察したうえで褒めたりという事は難しくなってきているのが現状であったりします。特に、入院生活をしている患者さんではリハビリに対するモチベーションが低くなりやすかったり、前向きに課題をこなすことが困難だったりすることも多いです。

残念ながら、日本人は他人の事を褒めることが得意ではない傾向にあります。

しかし、褒めすぎると低いレベルで満足してしまうとか、次への課題の意欲が下がってしまうなどの現象もあるので注意していく必要もあります。

では、リハビリテーションを円滑に進めていくためには、どのように褒めたらいいのでしょうか?

まず、治療の初期の段階では、初歩的なことでも患者さんを褒める必要がある場合が多いと思います。最初の簡単な課題ができるようになったら、次第にできることを増やし、レベルの一段高い課題を行っていきます。

いつまでも低いレベルの課題で褒めるのではなく、少し上のレベルをといった具合に要求水準を少しずつ上げていきます。

そして、ある程度動きが習得できてきたら、褒める回数を2回に1回、3回に1回と徐々に減らしていきます。

これはオペラントの技法でいう連続強化から間欠強化への移行です。

つまりどういう事かというと、新しい課題・行動を身につけてもらうには、毎回褒める連続強化の方が近道です。ただし、いったん身に付けた行動を持続して行えるようにするためには、時々褒める間欠強化が大切になってきます。

治療が始まってなかなか課題ができなくてふさぎこみがちな患者さんは多いと思いますが、臨床の場面としては課題の難易度の低い課題から行い、ちょっとでもできたらすぐに褒めて、だんだん上手に行えるようになってきたら特に上手にできた時にだけほめて、要求水準を上げていくことが大切になると思われます。

(武田 建、中俣 恵美、出田 めぐみ:理学療法士(PT)・作業療法士(OT)のための治療心理学: 患者によりそう行動アプローチ:2014